社宅から退去!原状回復にかかる費用は誰が負担するの?
賃貸物件の退去時には、必ずと言っていいほど原状回復費用が発生します。社宅の場合も同じです。社宅は会社名義で物件を借りていますが、費用は誰持ちになるのか悩みどころですよね。原状回復に対する考え方や、ルールの決め方について解説していきますので、社宅管理担当の方や社宅を利用している方は、ぜひ内容を理解していきましょう。
退去する際は原状回復が原則
退去時に必ず行われるのが原状回復。原状回復とは、住んでいた賃貸物件を借りる前の状態に戻すことを指します。具体的には家具や荷物の運び出し、清掃によるシミ・カビ・ほこりなどの除去、傷ついた場所の修繕などが挙げられます。しかし、個人の判断ではどこまで回復すべきか定義が曖昧になりやすく、貸主と借主の間でトラブルが発生しやすい要素でもあるのです。
定義の曖昧さによるトラブルの発生を防ぐため、1998年に国土交通省により「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が定められました。ガイドラインのなかでは、借りた当時と完全に同じ状態に戻すのではなく、経年劣化などを配慮した判断で問題ないと定義されています。そのため、普通に生活している以上、仕方なくついてしまう床のへこみやガスコンロ周りの軽い焦げ付きなどは許容範囲と言えます。
費用は会社と入居者のどちらが支払うの?
原状回復にかかる費用を支払う人は一般的に定められておらず、トラブルを避けるためには、会社側であらかじめルールを明確にしておく必要があります。ルールを作成するときには、会社都合か、本人都合どちらでの入居か・借り上げ社宅なのか所有者社宅なのか・福利厚生としての社宅制度なのか・会社にとっての社宅制度のあり方などを考えた作成が大切です。
ルールの内容として考慮したい項目は、費用の負担割合・会社が全額負担する可能性・どんなときに入居者が負担するかなど。作成したルールは、就業規則や社宅管理規約に記載しておき、従業員がいつでも確認できる状態にしておくことで、トラブルを未然に防げるでしょう。一般的に社宅は、敷金や礼金といった初期費用が会社負担であるケースが多く、家賃も何割かは会社負担であるため、退去時に必要な費用も会社負担であるとの考えも自然です。
そもそも大家と入居者のどちらが支払うべきなのか
社宅制度では会社を大家、社員を入居者と捉えることができます。国土交通省で定められたガイドラインには、居住・使用により発生した建物価値の減少のうち、故意・過失など通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することを原状回復の定義として、明記しています。
つまり、経年劣化や通常の使用による損耗などの修繕費用は、月々の家賃に含まれていると認識できます。普通に生活し、想定の範囲内であれば入居者が原状回復費用を負担する必要はありません。
生活上仕方のない程度の傷は大家が負担、その他入居者の適切でない使用方法が原因でついた傷は入居者が負担ということになっているのです。
よって、会社を大家と捉えるならば、入居者である社員がごく普通の生活をしたことによりついた傷の原状回復費用は会社が負担すると考えるのが妥当でしょう。ご紹介したように、ガイドラインの存在はトラブルを防止する役目がありますが、未だに原状回復をめぐるトラブルが確認されているのも事実です。いくつか事例を挙げていきますので、該当しそうな方は、普段から注意することをおすすめします。
■事例1:喫煙
物件の敷地全体が禁煙であるにもかかわらず、ベランダなら外なのでバレないだろうとベランダで喫煙するケースです。入居者自身が気づかなくても、他の部屋と比べると臭いや汚れは一目瞭然。原状回復費用を請求された場合は入居者負担となります。
■事例2:汚れの放置
ペットの飼育可能な物件であったとしても、柱や壁、床などに傷をつけても許されるというわけではありません。傷がついた場合は入居者が原状回復費用を負担することとなります。
■事例3:リフォームやDIY
部屋の雰囲気を変えたいからと、剥がせるタイプの壁紙を上から貼り付けようとしている方は注意が必要です。いくら剥がせるタイプとはいえ、必ず元通りきれいに戻せるとは限りません。何かの拍子で剥がす際に元の壁紙も剥がしてしまったり、気づかぬうちにカビが発生したりすることも考えられます。リフォームやDIYは通常の使用の範囲内と捉えられにくく、入居者に対し原状回復費用が請求されるでしょう。
原状回復費用をめぐるトラブルを防止するためにも、会社と入居者の間でルールを明確に定めておくことが大切です。費用負担となる基準や傷の許容範囲の認識あわせをきちんと行っておく必要があるでしょう。社員数の多い会社なら、社宅管理代行サービスへの委託も検討するとよいかもしれませんね。